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必殺からくり人・血風編 [必殺]

放映データ
テレビ埼玉で2015/12/09(水)から12/23(水)まで全11話

舞台が江戸時代末期の薩長と幕府との争い前夜の品川。ということでなにやら騒々しく、幕府側の取り締まり係がせわしなくおりくの店や品川の町中に登場してくる。また騒乱の世ということでええじゃないかを歌い踊る町民というのも出てくる。
からくり人という名ではあるが前作と登場人物や設定での関わりはない。ただ音楽は前作と同じものを使っているので見てる側が感じる雰囲気はある面似ている。
内容は前作が必殺において異色作だが意欲作だと思うが、こちらも雰囲気としては異色の内容。考えてみると必殺の世界観として、安定の世情、固定化された身分制度というのが背景、それゆえの恨みというのが殺しの理由となっており、今作品はそこらへんがかっちりとした安定の世情でないゆえ、殺しに説得力が薄い。オープニングナレーションには「きのう勤皇 きょう佐幕きのうホントで きょうはウソ」。天長・官軍側であろうと、公方・幕府側であろうと、どちらが恨みの対象として殺されようとそれが絶対権力でないからスカッとはしないというようなことを見ているうちに思いついた。それでもうまく悪役の悪どさが描かれていればうまくはいくんだろうけど、ここを時代背景とするとそういう問題に気がつく。

制作背景として、次作の新・必殺仕置人の遅れから、この企画が立ち上がったということがある。

殺しの技では土左ヱ門が銃を使うというのはつまらない。直次郎は足指で人の首の骨を折るというものなのだが、毎回出るわけでなく、短刀で刺すというような普通の殺しも行うので強烈な印象にまではならない。新之介の針で相手の首筋を刺すというのは必殺ではお馴染みの感があるが、その針が裁縫で使うようなやつなので小さくて目立たない。
シリーズが11話で短く、殺しを行わない回や、毎回3人ともが殺しを行うわけでもないということ、さらに土左ヱ門にしろ、直次郎にしろ固定化した殺し技でないことから印象としては地味

新之介役がピーターというのは彼の本名からそのまま取ったのだろう。
芳太郎というのはおりくの婿なのだが、第1話と2話だけ。入れてみたはいいが使い道がなかったのかフェイドアウトといったところ。

第1話 「魔窟に潜む紅い風」
お国 - 宮本信子
宮本信子がゲスト。またレギュラーで吉田日出子と個性的な名女優が出てきて、期待が高まる。話はちょっとわかりにくい。薩摩藩の武家の嫁・お国が江戸にいる旦那に子供を連れ会いに来るが品川の関所が抜けられず、裏から関所手形を手に入れるが、手形を融通した相手の一味に連れ去られ暴行された挙句殺されてしまう。その敵討に立ち上がるという内容。

第2話 「非道にたてつく紅い刃」
お梅 - 浅香光代
品川心中をヒントにしただろう作品。そういえば今シリーズの舞台は品川だった。
浅香光代は彼女のキャラクターを生かした肝っ玉母さん風。色情魔で年増の芸者役。
殺しの場面は「ええじゃないか」に混じって行われるのであるが絵がガチャガチャしていてわかりにくい。二人を殺すのであるが、ということになると、最初に実行した新之介の技では殺せていないということになる。

第3話 「怒りが火を噴く紅い銃口」
源三 - 江幡高志
江幡高志は冒頭からラスト近くまで出てくるが、あまり見せ場なし。伊勢屋の番頭で直次郎の遊び友達。
直次郎は土左ヱ門に不信感を持っているおりくから探るよう命ぜられ、彼もまた同じように思っており、土左ヱ門と一緒に行動している。その二人の追いかけっこが今話のほとんどすべて。
伊勢屋に強盗が入る。直次郎の幼馴染が何人か殺されそれが伊勢屋の強盗と関連があるらしく、また伊勢屋と土左ヱ門がつながっているらしいことを探り当てた直次郎。土左ヱ門を抜いたからくり人グループは直次郎の恨みを晴らそうと伊勢屋一味を狙うが、そこに加勢してきたのはライフルを持った土左ヱ門だった。
最後の殺しの場面は大勢を相手にする。新之介の技(直次郎の技もそうかもしれない)は一人一殺のときに映えるもので、こういうところでは不向き。一応殺しを行ってはいるが。
ライフル様のもの、火縄銃ってことはないだろうけど、銃身の長い銃でバンバンと何回も撃つのには萎えた。というより必殺に、特に仕事人側に銃は似合わない。

第4話 「大奥の天下に挑む紅い声」
弥七 - 松山照夫
勘八 - 阿藤海
井筒屋 - 岩田直二
直次郎が主役。
大奥の15代将軍の世継ぎを巡る権力闘争。染井の自分の子を世継ぎにするための陰謀。
大奥に上がっていた女が世継ぎの権利のある子を連れ逃げ出し、その子を直次郎が拾ってしまうところから話が始まる。第2話でも第3話でもあった「金にならない仕事」をまたやらざるを得なくなってしまうことになるが、今話では直次郎が金を出し、しかしその金は返金され、仕事のついでにお金を拝借したという展開。いまのところ、「必殺からくり人」や「」で感じたような話の展開の無理さ「必殺必中仕事屋稼業」は感じない。
松山照夫、岩田直二はともに必殺のほかの作品で印象深い役をやっていたという記憶がある。
ウィキでの直次郎の記述--
捨て子だった彼を拾って育てたのは女郎だったため、女郎には優しいが反面、その仲間の女郎から性的虐待を受けたために女嫌いでもある(第2話)
--
これが具体的に語られるのは今話。第2話では具体的に育ててくれた女郎が直次郎を拾って育てたんだよと語る場面はあるが、性的虐待うんぬんの話はない

第5話 「死へ走る兄弟の紅い情念」
おりくが主役の回。
紺次郎は羅紗緬のお香を連れて逃げ、川に飛び込み心中。両方助かりお香はお咎めなし、紺次郎は晒し者にされた上で死刑。紺次郎の兄、洋三はおりくとかつて恋仲であったが、おりくが稼業を継ぐためか、洋三が新徴組に入り京へ向かったためか、別れてしまった。
晒し者になっている弟の前に洋三が現われ、おりくとも再会、過去についても明かされる。
仕事は刑に向かう紺次郎を奪うというもので殺しはなし。新之介とおいねを連れたおりくが刑に向かう列に立ちはだかり、止まったところで土左ヱ門がライフルをぶっ放す。この仕事では直次郎は絡んでこない。

第6話 「悲恋を葬る紅い涙」
お栄 - 鮎川いづみ
蛙の彦六 - 春風亭柳朝
宇佐美源四郎 - 剣持伴紀
必殺ではお馴染みの鮎川いづみにあっと驚く柳朝の登場。役柄は鮎川いづみが芸者で柳朝は太鼓持ち、二人は夫婦(芸者太鼓持ちのくっつきあいはご法度なので隠している)という関係。
柳朝については顔はそれほど見たことがなく、また落語もそれほど聞いていない。ので最初登場したときはわからなかったが、やけに目立つように演出されており、これは有名人だなと、そして見進めていくうちに、これは芸人だな、これは落語家、あ、見覚えある少しの記憶と、聞き覚えのある少しの記憶か、これひょっとして柳朝じゃないかなどと思う。先にキャストクレジットを見てしまおうかと思ったが、それは我慢した。
柳朝の師匠は8代目林家正蔵、後の彦六だが今話は彦六襲名前だ、これもすごい。
冒頭の囃し歌、途中の囃し歌(こりゃまた、猿股、ステテコパッチ)は由来があるのだろうか。明治に流行ったと言われるステテコ踊りかと思ったが調べてみたらこれは違うな。
鮎川いづみは後年の加代のようなキャラでなく、美人という面をクローズアップさせたキャラで純情な芸者。確かこれより前にもゲスト出演はあってそのときも後年のようなキャラでなく今回のような設定に近かった。

第7話 「恨みに棹さす紅い精霊舟」
精霊村源二郎 - 樋浦勉
楫取吾兵衛 - 浜村純
密偵 - 牧冬吉
おいねが今話で退場。ということもあり主役。客と惹かれあい、着いていくことになるが、その実像は・・・。一方おりくの方でも違う方向から仕事として調べていくと、おいねが着いていった男が浮かび上がり、救出に向かうことになる。おいねは命は助かるが、この後の作品には出てこない。
吉田日出子は今シリーズではレギュラーということで、ところどころではキャラクターを生かした面白い場面もあるのだが、大きくフィーチャーされては来なくて不満だったが、ようやっとというところ。

第8話 「帰らぬ愛に泣く紅い旅」
縫 - 高杉早苗
おはつ - 大谷直子
浄吉 - 綿引洪
浄吉によって女郎にさせられたおはつは、かつては武家に奉公に出ており、左近とは結婚約束もしていた。左近が京へ赴任となり、はつはやけになり奉公先を辞め、浄吉と結ばれたのだった。
女たらしで女を売り買いする男とそこから抜けられない女。こういう話は必殺に限らず時代劇全般、いや、現代劇にもよくあるテーマ。ひとつ思うのは、「簡単に別れればいいだけじゃん」と思うのだが、どうだろうか。それの妨げになっているのはなんなのだろうか。例えば借金によって縛られてるというのはあるだろう。また今話で伺えるのは、身体の相性ということも考えられる。でも後者は結びつけの論理としてはちょっと弱いか。なぜ、支配されてるかのようになってしまうのかが考えてみるとよくわからない。今話でそういう疑問でめちゃくちゃになっているということではなく、芝居の上手さもあり、充分見られる作品ではある。
殺しは新之介のみが担当

第9話 「小判が眼をむく紅い闇」
儀兵衛 - 菅貫太郎
おさよ - 八城夏子
武 - 石山律雄
枕探しの被害に遭った男 - 芝本正
芝本正はクレジットでは「男」となっているほんのチョイ役。おさよに被害を被った男役。
石山律雄は盲人の按摩。「按摩」が規制用語なのかカットされていたようだ。これが登場のところで嫌な笑いを浮かべていて悪役かと勘違いしたが、最後まで善玉役であった。武はおさよと相思相愛。しかしおさよは裏では相当の悪。ひとつわからなかったところがある。武は金を大いに貯めているが、そのありかを聞き出せと兄に言われおさよが気のないそぶりながらも聞き出し、それを隣で兄が聞いているという状況。その際、武は「ボクには怖い守り神がついてるんだよ」と言うのだが、その次の場面で金を盗み出そうとしている兄がギャーッと叫び倒れる場面。これが最後に謎解きされるのかと思ったがなにも説明されなかった。
菅貫太郎は一番のお得意の狂気の殿様・代官という役柄とはちょっと違い、商家の次男。長男が官軍(これは偽者で官軍を騙っている)への献金を断ったことで殺され、自分の代となる。
おさよを金で買い二人いるところに、また官軍を騙っていた男たちがまた金をせびりに来た。秘密を聞かれたということでおさよを殺し、また儀兵衛はその男たちも殺す。武の依頼でからくり人は儀兵衛を殺す。

第10話 「とらぬ狸の紅い舌」
栄吉 - 平泉征
釜屋 - 西山嘉孝
おたね、おまきという白濱屋の従業員が準レギュラー。他にもいたかもしれない。キャストクレジットで一応気がついてはいたが、どっちがどっちとか気にもならない単なる集団の一部分と行った役柄で、こういうキャラクターはあまり作品の中でクローズアップされることはない。例えば、『必殺仕置屋稼業』でおはつ、るみ、のぞみというのがいる。おはつは主水とコント的やり取りをやる飯屋の娘で目立つ存在だがそれでもストーリーには絡まない。るみ、のぞみというのはおこうの髪結屋の従業員だが、どちらがどっちというのは意識にもかけない。で、おたねもおまきもそんな存在だと思っていたのだが、今話ではおたねが、そして次の回ではおまきが重要な役割を担う。
おたねはおよし、栄吉夫婦と同郷で幼馴染だが、おたねのほうはずっと下層階級。おたねは栄吉に惚れており、およしを羨やみ憎んでいる。
栄吉が一攫千金を夢見て江戸に出てくるのだが騙され金を巻き上げられる。そして追い討ちをかけるようにさらに騙されるのだがこの場面はなかなか良い。官軍の塚原兵衛に芝居をしてくれと言われるのだ。塚原は江戸の各町を火にかけようと計画してる一環で品川一帯にもそれが行われると脅し組合から金を巻き上げようとしていた。金を渋る彼らの前に、他の街から同じ理由でお金を届けに来たと栄吉が芝居を始める。その金が足らないと切り捨てる塚原。これで品川の一行に脅しをかけているのだ。
栄吉の敵を取りたいなら金でなんとかしてくる人たちがいるとおよしに伝えるのがおたね。それを困った顔で隣で聞いているのが直次郎という構図が良い。

第11話 「夜明けに散った紅い命」
いよいよ官軍が江戸へ入り、直次郎は官軍の密告役を仙吉から紹介され不本意ながら行っている。白濱屋の従業員おまきが客の男・徳松と恋仲になるが、徳松は彰義隊。直次郎は密告はしないと約束するが、仙吉はその約束を破り密告、徳松は殺され、直次郎はおまきや土左ヱ門から恨まれる。直次郎は自分の身の証を立てようと仙吉に詰め寄るが、逆にからくり人だということまで知られてしまい、官軍に嬲り殺しにされる。土左ヱ門の家まで戻り、おりくに愛の告白の手紙を残し息絶える。
今話の新之助の殺しの場面はとても良い。土左ヱ門は相変わらず銃での殺しであるが、相手(上司にあたるのか、官軍の的場)の自慢する銃を手に取り、色々感触を確認しながら、相手に標的を定め撃つというものでたっぷり時間を取っている。
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