SSブログ

笑の大学 [映画]

2004 日本
03/30(火) 13:00 -
NHKBSプレミアム|122分

連ドラ二本を続けて見て疲れた。なにも入ってこない感じで、なにを見ようかなとリストを見たら、ちょうどこれが録画中。ということでこれに決めた。
途中で寝てしまった。三谷幸喜作品(原作・脚本。監督は星護)ということで面白いはずと思いながら、そしていくらかは楽しんでいたつもりなんだが。
できれば一気に見たい作品で、インターバルが空いてしまい、興を削がれた感じになってしまった。

詳細はウィキに譲るとしてこの映画版、役所広司と稲垣吾郎の主演、というか二人芝居。元は演劇である。
稲垣吾郎に似てるなと思いながらも似た感じの人だろうと思ってしまった。今とはちょっと違う感じか、数年で結構雰囲気が変わるものだ。
誰かが言ってくれると、そうだそうだとなるのだが、この映画評をネットで見ていたら「ポンコツ映画愛護協会」というのが取り上げており、役者不足と。近年は実力のある俳優という評価もあるので、見間違いかと思ったが、やっぱこの作品では棒調子だよなあ。
ゆえに役所が存分に上手さを見せつけている感じ。

戦前の日本、演劇台本を検閲するという時代。取調官が喜劇作者を検閲のため取り調べるという数日間が描かれる。台本をお国の統制に従った内容にさせようと指導をしていくのだが、その取調官がいつの間にか台本を面白くしようとがんばってしまうという部分がほぼストーリーの大部(まあその後に反転しての結末があるのだけど)で、考えてみると、これって凝縮するとコントでよくあるもの。取り調べをするが相手の口調に乗っかってしまい、いつの間にか二人が意気投合し、はっと我に返り、「何をやらせるんじゃ」みたいな。
それ以外にも細部にコント的な発想が見受けられる。
また、ギャグの種類や笑いどころの説明みたいなもの(「そこが笑うところなんですよ」みたいなセリフ)もいくつか出てきて、これはちょっと新鮮な驚き。お笑い台本を説明するというメタの構造ともいえるようなものが、戦前の日本を舞台にやってるところが新鮮。

「いつの間にか台本を面白くしようとがんばってしまう」というこの過程が秀逸だと思った。言葉にしてしまうと陳腐だが5分のコントでないのだから、ゆっくりゆっくり描かれており、笑いに一切興味を持っていない取調官、向坂が少しずつ笑いにのめり込んでいく様子は中盤までほんの少ししか挿入されておらず、むしろ、そんなことしてないのに、作家、椿は少しずつ台本をレベルアップしていく、そして徐々に、向坂も台本を良くしようという助言を与えるようになり、最後には二人での協調作業のようになっていくという展開だ。
で、その椿の行動(取り調べを受け入れ台本を書き換えレベルアップさせていく)の理由は最後に明かされ、ああなるほどと思う。その理由とは、取り調べに対抗して拒否するとか筆を折るとかすることが喜劇作家の戦いではない、それをこなしてさらに笑いをレベルアップさせることが権力に対する自分の戦いだ、みたいな。
で、ここに向坂は激怒し、態度を翻し、さらにもう一つの要求「笑いの部分を全部排除せよ、そうしなければ上演は許可しない」と命令。
で、ラストは椿は命令を無視し書き直した原稿には笑いの集大成のような台本で、向坂はそれに笑ってしまったことを告白しつつ、なんでこんなことをしたと椿に問い質し、椿に赤紙がきたことを知り、「生きて戻ってこい、台本は自分が預かってるから、戻ってきて、この台本を上演しろ」と語りかけるというもの。
権力との戦いと口にした椿に権力の末端である向坂は自分の立場を思い返すとこう書けば、そう変でないのかもしれないけど、見てる最中はその向坂の態度豹変のところは理由がよくわからなかった。

椿は喜劇作家・菊谷栄がモデルとのこと
菊谷栄は「メリーさん大変だ」で有名な「最後の伝令」を書いた人