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居酒屋兆治 [映画]

83年の日本映画。2点
監督 降旗康男
主演 高倉健(藤野英治役)
81年の「駅STATION」と監督主演が一緒。さらに出演陣もかなり重複。極めて近い空気感。
主人公の妻・藤野茂子を加藤登紀子が、主人公の昔の恋人・さよ役を大原麗子が務める。加藤は本職が俳優でないせいであろう、出足で映った瞬間なんか違うなあと思った。あまり存在感はないが、役柄設定がそうなっているからこれはこれで正解。映画は初出演。
大原麗子と高倉健は、この作品の事実上の主役だが、二人が一緒に芝居してる場面は少ない。せりふのやり取りをしてるのは一回だけである(電話はのぞく)。あとは、冒頭の火事の場面で見つめあうシーンと、ラストの死んでしまったさよを抱き上げるシーンだけ。あと昔の思い出の写真としてツーショットがあるが。
さよは作品の最初からすでに情緒不安定な状態で、その後もどんどん酒におぼれていくという役柄。大原が好演。大原は一人暮らしであり自宅で亡くなってるのが発見されたが、この映画での結末もそれを思い起こさせる。
英治の経営する居酒屋・兆治の常連客として細野晴臣が出演している。どういう関係でオファーされたのか興味がある。演技としてはもちろんうまくない。市役所職員の役だがどことなく、というかかなり異様な風体(ランニングシャツで前面に「市役所」とかかれたゼッケンのようなものが貼り付けられている)。ちょうどYMOが解散する直前の時期であり、当時のYMOが与えていた印象どおりの役のような気がする
伊丹十三が英治の先輩で嫌な常連客を好演。田中邦衛、小松政夫も堅実な演技
ちあきなおみが兆治の向かいで小料理屋を経営している役。ちあきなおみも女優というよりは歌手であるが、ここでの演技は悪くない。作品中でソーラン節を披露している。
ラストはさよの葬儀なのだが、そこでさよに過去、及び現在関係のあった3人(高倉と平田満(さよと最後に関係を持った)、左とん平(さよの夫))が順に映し出されるシーンはみないい表情をしていた。
特別出演で山口瞳、山藤章二。山口はこの作品の原作者。山藤はこの映画の題字を担当。(調べてみるとこの原作本の表紙も山藤が担当しているっぽい)
どこで出るかなと思って観ていたが、山口はすぐわかった(それほど風貌知らないはずなのに)。山藤は気付かなかったので、再度見直してみると、山口の隣にいた。山藤のが風貌としては目立つはずなのに。山口にはせりふがあり、暴行騒ぎのあった兆治に警察(細野がわざわざ大事にするためチクった)がくるとその警察官に「まあそういうことだからお酒を飲みなさい」と勧める。
ストーリーはあるが、ストーリーに絡まない逸話などもいくつか出てきており、それは焦点がぼけるという面もあるが、この居酒屋に集う人々の点描というのもこの作品のもう一方の肝のような気がする。ストーリーに絡まない逸話とは例えば英治と野球少年との交流。英治の通った学校の校長先生(演・大滝秀治)とのやりとり。
メインストーリーはかつて英治と恋仲であったさよは現在の夫(牧場経営主)の家を出ていたが戻る。しかし火災が起きそれを期にまた姿をくらましてしまい、警察から放火を疑われ、さらに英治との関係から英治が共犯ではないかと疑われ、と展開していく。さよは札幌でキャバレーに勤めるものの酒に溺れて結局アパートの一室で孤独に死んでいく。といったようなもの。ラブサスペンスの要素もあるが、提示された謎(火災の原因は作品中に映し出されているのでわかってはいるが、それを警察が追い詰めていって解明するというようなことは描かれていない、最後に英治が普通の生活を送っているので疑いは晴れたのだろうが)のようなものは解明されない。
音楽
冒頭の音楽が軽く明るいので、何か違和感を持った。勝手なことだが作品にイメージを持っており、それに合わないと思ったのだ。井上堯之が担当しており、なるほど、当時のテレビドラマのテーマ曲みたいな感じなのだ。
ラストの主題歌は「時代おくれの酒場」 歌:高倉健、作詞・作曲:加藤登紀子、編曲:井上堯之
こちらはイメージどおり

※追記
ラストシーンはさよの葬儀を終え、兆治で英治夫婦が後片付けをしている。ひとしきりの会話(この作品の名シーンのひとつであろう)の後、茂子が先に帰宅の途につく。英治が一人で酒を一杯飲み、顔を拭い「さあ元気出して行こうぜ」というようなことを言い店を出て行く。というもの
この部分、ありきたりな作品なら、高倉に眉間にしわというような表情させて終わりそうなもの。なぜか軽い調子。この部分とオープニングのテーマ音楽から、自分なりに解釈すると、英治とさよというのはこの作品においてサブストーリーのひとつであり、その他諸々のエピソードなどから窺えるように店周辺の点描というのもこの作品の基調の一つだということ。さらにいえば、英治はここでさよへの思いは思い出にし、明日からまた居酒屋店主としての日常を送ろうという決意と思えた


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